トップ 移住者インタビュー “人”を核に鋳造部品メーカーとして新たなステージへ

2022.03.24
かほく市

“人”を核に鋳造部品メーカーとして新たなステージへ

  • #地域企業

自動車や建機、鉄道など多彩な分野に進出 

石川可鍛製鉄(かほく市)は、飛躍的な成長を続ける鋳造部品メーカーです。品質主義を徹底し、金型の設計から鋳造、その後の切削や熱処理といった機械加工までの一貫した生産体制を構築。世界最速造形ラインを備え、月20万個の量産も可能な西工場と、大型や複雑な形状の鋳造を得意とし、小ロットから対応可能な東工場があり、自動車関連を中心に建設機械や鉄道、水道管の継手などの幅広い部品を製造しています。

同社営業部営業課の中橋佑介課長によると、「お客様は全国に広がっています。近年では大手メーカーとの直接取引も増えています」とのこと。急激な成長に伴い、クライアントのニーズも多岐にわたり、より高度化しています。

そこで、同社では技術力と専門知識を備えた経験豊富な人材の確保に力を注いでおり、その一環としてILACも積極的に活用。UIターン合同企業説明会などを通して、これまでにUターンで2人が入社し、即戦力としてスキルを発揮しています。

データをもとに品質・生産性向上に力

石川可鍛製鉄に加わったUターン人材の一人が、2020年4月に入社した板井拓真さん(かほく市出身)です。板井さんは品質保証部に所属し、鋳造部品加工に関する膨大なデータを収集・分析することで、不良品が発生するメカニズムを突き止め、品質や生産効率の向上につなげていくのが仕事です。

「天候の違いで不良率が変わるなど、鋳造に影響を及ぼす因子は無数にあり、分からないことだらけです。だからこそ、やりがいもあります。レベルの高い要求にどんどん応えていきたいですね」

こう話し、仕事の充実ぶりがうかがえる板井さんは、大阪からふるさとに戻ってきました。これまでの歩みを振り返ると、大学進学を機に大阪へと移り住み、大学院修了後、大手ハウスメーカーで太陽光発電パネルの研究・開発に臨んでいたそうです。ただ、当時は派遣契約での勤務で、新型コロナウィルスの感染者数が増え始めており、先行きへの不安もありました。そこで、派遣契約が一区切りつくタイミングで、帰郷を決めました。

「決断は正解でした。やはり地元は落ち着いて生活できます。会社もサポートが充実し、外部研修など新しいことにもどんどん挑戦できます。今後はIoTも導入しながらビッグデータの解析も進めていければと考えています」赤々と溶けた鉄を流し込む鋳造現場とにらめっこしながら、板井さんの情熱も負けず劣らず燃え上がっています。

行政からの手厚い支援策で生活面も安心

もう一人の即戦力が、2021年4月入社の飯田裕樹さんです。飯田さんは福井県の大学を卒業し、愛知県豊田市で自動車製造に関する生産技術部門で9年間、働いてきました。その経験を生かし、石川可鍛製鉄生産技術部で、部品の仕様を落とし込んだ図面をもとに、いかに製造していくかを検討しています。

メーカーの心臓部とも言える業務を担っており、同社で人材の採用・育成に携わる総務部経理課の中道真広さんは、「入社1年目からフル稼働してくれています。生産技術部の上司も飯田さんの頑張りをとても評価していました」と話し、今後のますますの成長に期待を寄せています。

新しい職場で奮闘を続ける飯田さんのふるさとは石川県七尾市。Uターンのきっかけは19年に長女が誕生したことでした。

「妻も七尾出身で、子育てするならば海も山も身近にある石川県がいいと意見が一致しました。何よりも親に孫の成長を見せたいという気持ちも強くありました」と飯田さん。ILACに登録したところ、経歴を生かせる職場として石川可鍛製鉄を紹介され、入社しました。

Uターン後は、かほく市のアパートで暮らしています。家賃は以前の約半分で済み、賃貸住宅に対するUIターン住まい補助金など、市の移住支援策も充実していると言います。さらに、22年5月に新居が完成し、5月には2人目のお子さんが誕生するといううれしいニュースも。「かほく市ではマイホーム取得に関する奨励金があり、石川に戻ってきたからこそ、新築を考えることができたと思います。親が近くにいるので子育ても安心です」と笑顔を浮かべる飯田さん。3世代の家族が集まり、にぎやかな笑い声に包まれる新居になりそうです。

インターンや会社見学も積極的に受け入れ

中道さんによると、UIターン人材の採用を通して社内にもいい影響が出ていると感じています。「採用や人材育成に関する意識が格段に高まったと感じています。どれだけ時代が変わっても、会社を動かしていくのはやはり“人”ですから」と話し、石川可鍛製鉄では現在、人材確保に向けてインターンシップや会社見学などを積極的に受け入れています。

「なぜこうなるのか、どうすれば改善できるのかを考え、どんどんアイデアを出す。そんな自ら問題を発見し、解決していくことのできる方を求めています」と中道さん。鋳造部品メーカーとして新しいステージを目指し、石川可鍛製鉄では、“人”に重点を置いた取り組みをさらに活発化していく考えです。