トップ 移住者インタビュー 「てきとう」な暮らしがかなう場所

2016.09.30

「てきとう」な暮らしがかなう場所

”ほどよい” 金沢市が持つ、二者共存の魅力

石川県の金沢市に拠点を構える株式会社 新時代の代表取締役 牧口奏江さんは、新潟県・柏崎市の出身。東京の音楽大学へ通うために上京し、卒業後に都内に就職。計10年ほど東京で暮らしたのちに、金沢市へ移住を決めました。

「大学時代までは、音楽一色でした」と振り返る牧口さん。
「同時に、東京という場所で、生きる目的と言える職業をずっと模索していたんです」

ライフワークの可能性を広げるために、大学院進学を決めた牧口さんは、”何を学ぶか”ではなく、”どこで何をするために、学ぶか”に焦点を絞りました。

「卒業した後に、その場所で具体的に何が出来るかを考え、自分に合う土地を見つけようと思いました。候補としていたいくつかの県を実際に訪れてみて、“やっぱり金沢だ” と感じたんです」

なぜ、やっぱり金沢、と感じたのでしょうか。

「自然があり、都市もある。伝統的な街並みと近代的な建造物が共存している。国際色が豊かなのに、古風な性質も持っていたり、とてもユニークな場所だと思いました。」

地方には地方の、都会には都会の良さがあります。しかし、地方でも都会でもない ”ほどよい” 地方都市の代表とも言える金沢市が、両方の暮らしを経験した牧口さんのハートを掴んだのだそう。

「地場産業と人々の暮らしが密接で、中小企業の元気さを肌で感じました。石川県には、いわゆる大企業は多くありませんが、そのぶん中小・中堅企業が多く活躍していて、土地の力を感じたんです」

進学先となった金沢大学も、自然に囲まれた山の中に位置していながら、大学自体のシステムとしては広く外に開かれているという印象が、入学の決め手となりました。

ある/ないのメリハリを楽しむ暮らし

現在牧口さんが住んでいる「シェア金沢」は、住人一人ひとりがつくる小さな「街」です。敷地内にはアトリエ付きの学生向け住宅や、サービス付き高齢者向け住宅など、たくさんの施設が併設されています。敷地内の道はあえて狭く設計されており、すれ違うたびに挨拶ができるしくみです。普段の生活の中で、住人同士でのコミュニケーションが自然と生まれる場所なのだそう。

また、観光地ならではのライフスタイルも満喫している牧口さん。

「四季折々の景色が美しく、観光資源が豊かなので、小旅行には事欠きません。わざわざ遠方に行かなくても、湯涌温泉や和倉温泉、山中温泉など温泉の名所がたくさん!日頃の疲れをゆっくり癒してくれます。観光客に人気の町屋など、県内のスポットに週末出かけて泊まって、ちょっとした贅沢ができるのも金沢市の魅力ですね」

こうして金沢暮らしの良さを感じる一方で、地方に住むことにより、東京の持つ文化や最先端の情報に触れられなくなることに危機感もありました。金沢と東京を結ぶ新幹線も、移住の決め手の一つだったと言います。

「金沢でしか触れられないものは沢山ありますが、金沢にないものも沢山あります。でも、それを解決するには東京に行ったらいいですよね。都心へのアクセスが良いことは、大きな強みです」

機会をくれた石川県への「恩返し」

石川県では平成21年から、若者が国際社会で活躍できるように、県内の学生や県出身の学生を国連本部などに派遣して、現役職員から直接講義を受ける「いしかわ国連スタディビジット・プログラム」を行っています。
牧口さんは大学院生のときにこのプログラムに参加する機会に恵まれました。ニューヨークに行き、職員と一緒に切磋琢磨しながら1つのプログラムを作り上げたことが、とてもいい経験となったそうです。だからこそ、何らかの形で石川県に貢献したいと考えてきました。

大学院卒業後、平成30年5月に株式会社「新時代」を設立。コンサルティング事業に基軸を置き、持続可能な開発目標(SDGs)の考え方を取り入れた多種多様な取り組みを行っています。

また、学生時代から積極的に参画している公益社団法人金沢青年会議所メンバーとして、地域に根差した活動も同時に行っています。

牧口さんは仕事を進める中で、常にイノベーティブであることを意識しています。ただ単にお金を生み出すことを事業目的とせず、あくまでもSDGsのコンセプトに沿った、ブランド戦略の場として提供できる企業経営コンサルティングを完遂したいと考えています。

「今までは経営学がビジネスの重要性の上位に位置していましたが、今後は芸術思考やデザイン思考という ”思考パターン” が経営を加速すると思っています」

牧口さんの会社では、コンサルティングを基軸にした、10の領域のエクスパティーズ(専門家・専門知識)を集め、組み合わせることによって唯一無二の事業構築を目指しています。

「例えば、最近は何か面白いことをやりたいという発想力や、こういういいものを創出したいという情動を持っている若手クリエイターが活躍できる場が増えたと感じますが、彼らは、自らの生活を高める経営手法を持っていないことが多い。そこで、適切な事業の仕組みを専門家と一緒に構築し、彼らに提供する。私たちがエントリーポイントとなることで、クリエイターに正当な対価を流すしくみを整えることができると考えています」

金沢には、力のあるクリエイターがたくさんいます。そういった方々がよりよい生活を確保することで、更に新しいものを生み出す力となり、良い連鎖が生まれる。
その正しい経済の循環を形にするべく、株式会社「新時代」は日々動いています。

牧口さんが好きなことばは、「適当(てきとう)」。この言葉には、人の心を豊かにしてくれる意味が込められています。みんなそれぞれが、“てきとう”でいることで、暮らしが心地よくなる——— 住む人が ”てきとう”になれるまち、金沢の魅力を、牧口さんからたくさん教えてもらいました。