トップ 移住者インタビュー 4つの事業モデルで繊維業界にイノベーションを巻き起こす

2018.05.18
中能登町

4つの事業モデルで繊維業界にイノベーションを巻き起こす

繊維業界初のビジネスモデル

「能登上布」に始まり、織物産地としての歴史が長い中能登町で、「織」から「加工」までを一貫で行い、これまでにない様々なビジネスモデルの構築にもチャレンジしている丸井織物。1937年の創業以来テキスタイルメーカーとしてより良いものを提案していく「提案委託事業」として成長を遂げてきましたが、近年では自社ブランドを立ち上げて仕入れから販売までを行う「自販事業」、IT による新たなビジネス創造を構築する「IT事業」、グローバルマーケットの需要に対応する「海外事業」と4つの事業を展開しています。その過程で受け身から提案型へと進化していった企業としての道のりを島木さんと糀谷さんに伺いました。

「繊維業界では、織・染・縫製とそれぞれ専門の会社が分業するのが当たり前です。その中で織から染、また加工までを一貫生産するのは業界内でも初めての試みでした。一貫生産をすることで納期の短縮はもちろん、ゴールを見据えた商品の開発もしやすくなりました。また、世に出回っていないような製品なども先駆けて生産し、幅広い分野に提案していけるところが弊社の強みとなっています。」

繊維として真っ先に思いつくのは衣料用織物ですが、車のエアバッグや養生テープ、飲料フィルターのティーバッグまで、日々の生活のあらゆるところに織物は使われ、丸井織物で生産されています。

心地良さと品質にこだわりぬいた自社ブランドに夢を託して

2016年に生まれた自社ブランド「NOTO QUALITY」は、流行りそうなものや売れてるものを真似するのでなく、普段の生活の中でちょっと心地よいと思うもの、自分たちも本心からそう思える衣服や生活用品をつくろうという想いから始まりました。

「ものづくりの世界では『モノよりコト』という言葉があります。例えば腕を通した時に気持ちいいとか、日常のなかでふとした瞬間に感じる心地良さを感じてもらえることをコンセプトに発信しています。」

丸井織物のコアである「織」の工程で素材を熟知した技術者が、糸・織・染の特性を最大限に引き出して、素材そのものの品質を高めています。目指す品質にたどり着くためには妥協せず、開発・生産からお客様の手に渡るまで、自工程で品質を作り込むことを徹底しています。

廃校になった小学校を工場に

丸井織物は、繊維と関係のある事業から、一見全く関係のない事業に至るまで、新しいビジネスモデルとして「IT」の可能性を確信しています。

「元々は1200台ある機械を管理するためにFAシステムの導入によるビッグデータの活用法としてIT事業が発足しました。衣食住の『衣』に位置する布は、今後も世の中で無くならないものの一つかもしれませんが、ずっと同じことをしていたら成長できませんし、会社があり続けるためには変化をいとわないことも大切です。そこでインターネット注文によるオリジナルTシャツの製造・販売を担う工場の増設に伴い、新しい試みの一つとして廃校になった中能登町の小学校を工場へと転用しました。今までの弊社の特徴との大きな違いは、『B to B』から『B to C』という事業形態です。対企業と対消費者とではクレームの内容も違い大変参考になるので、今までは得られなかった消費者目線の反応を分析して、いろんな知識を身につけることで『NOTO QUALITY』にも活かそうという狙いもあります。」

過去の膨大なテキスタイルが並ぶ“布の博物館

1980年代からのおよそ5万点におよぶ生地サンプル(テキスタイル)とその織物設計書、生産条件のデータベースが蓄積されている「テキスタイルスタジオ」には、お客様が全国各地からわざわざ足を運んでくるそうです。その魅力とはいったい何でしょうか。

「海外のお客様がここまで来て、実際に過去のテキスタイルを触りながら、今の時代に合ったリメイクのアイデアを出し、一緒に商品開発を進めることもあります。流行は何回も繰り返されます。過去のテキスタイルをこれだけ揃えているところは他にはないので、現地で現物を実際に手に取ることにより、商品をより世間のニーズに近づけていくことができる貴重な場所となっています。」

織物設計書やデーターベースも現物とともに保存されているため、設計者やデザイナーが直で触り、フィーリングをつかみ、また新しいアイデアが生まれるそうです。

人への投資が会社を成長させる

常に新しい挑戦をし続けている丸井織物ですが、創業からずっと変わらない理念とは何でしょうか。

「設備にはもちろん投資しますが、それ以上に人に投資するところが強みだと思います。社員を大切にし成長させることを一番に考えています。能登という風土の影響か、人が素直で何事も一生懸命に取り組む姿勢は昔も今も変わりません。経営陣はじめ、諸先輩方が作り上げた組織風土の中、同類愛求むと言われるように、新しく入社してくる新入社員や中途入社の社員たちもまた、志が高く、素直で一生懸命な人が多いのが特徴的ですね。」

丸井織物では社員研修も多く、毎月一回はさまざまな研修を受けています。
「たとえこの先にAIの時代がきても、それをよりよい方向で活用するために意志を持って考えられるのは人間です。改善や改革をしていくために技術力からマネジメント力まで必要なスキルを磨くことを追求していった結果、行き着いたところが研修なんです。」
人間力と技術力を高め、叡智を結集させるため常に行動し、経験や知識を蓄えてゆく。そのための手段のひとつとして、研修は必要不可欠だと島木さんは言います。

「また、この会社の良いところは一社員の意見も社長に届く風通しの良さです。先輩方も若手社員の意見を尊重してくれますし、やる気があれば活躍できるのでやりがいを感じます。」

人を大切にし、新しい取り組みを積極的に取り入れて企業としても成長してく丸井織物は、今後も中能登町から世界へ発信していくことで、今まで支えてきてくれたこの地に恩返しをしたいと願っています。