能登半島、里山里海の恵みが織りなす料理
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七尾の市街地を少し離れ、ログハウス風の店舗。東京で修行を重ねた平田 明珠(ひらた めいじゅ)さんが能登の海の幸、山の幸に惚れ込み、素材の旨味を最大限に引き出したイタリアンレストランVilla della Pace (ヴィラ・デラ・パーチェ)。「Pace」はイタリア語で平和を意味し、能登のゆったりとした時間を感じて頂きたいとの思いからつけた店名。平田さんは能登の生産者と料理人を結ぶ「能登F-Fネットワーク」の理事も勤めている。
地域活性化に貢献できる生産者と料理人
「学生時代は行政の勉強をしていました。その頃から料理人を目指していた訳ではなく、アルバイトで飲食店の経験がある程度でした。就職先としては『休みが少なくて給料が低い』というマイナスイメージがあり、料理は好きでしたが『老後に店ができればいいかな』と考える程度でした。また、当時から地域貢献に興味があったのですが、料理=職人の世界という固定概念があり『料理人は地域貢献には向かないな』と考えていました。」
学生時代はすぐに料理人になる考えを持っていなかった平田さん。地域の食材を生み出す『第一次生産者』と素材の良さを最大限に引き出す『料理人』が出会うことで、人が集まり地域活性につながる事に気付いたそうです。
「東京で働いている際に地方の料理人や生産者と触れ合う機会が多く、地域活性化に繋がる必要な存在と気がつきました。そこから料理人も地域貢献を行える自信を持ち、起業を考え始めました。魚・肉・野菜が揃う県という条件で和歌山県か石川県で悩みましたが、石川県の生産者へ訪問すると同年代の生産者がいて、交流するうちに少子高齢化で後継者が減っている現状を知りました。素晴らしい食材があるのに将来使い続ける事ができない可能性を聞き、自分が石川県で起業し活動することで、生産者の方々の課題も解決できるのではないかと思い、石川県での起業を決意しました。」
能登の牡蠣の美味しさに感動してからというもの、石川県の食材のバランスの良さと品質の高さに惚れ込んでいた平田さんは、様々な理由が後押しとなり石川県での起業を選ばれました。
30歳で七尾市への移住と開業
当初より30歳で独立を考えていた平田さんは、予定通り30歳で七尾市へ移住しました。
「元々つながりのあった生産者さんが七尾市周辺だったので、石川に行くなら七尾方面にしようと考えていました。株式会社御祓川さん(※1)など、民間でまちづくりを一生懸命おこなっている方々が近くにいたのでとても心強かったです。食材から移住を決めましたが、石川県の能登には地元の食材をしっかり使っているイタリアンのお店がなかったので、イタリアンの店をやろうと決めました。七尾市では移住者と起業者に対するサポートがしっかりしていたので、意外とすんなり石川県に馴染む事ができましたね。」
(※1、株式会社御祓川:「小さな世界都市・七尾」の実現に向けて、まちを育て、みせを育て、ひとを育てている民間まちづくり会社)
人の温かさに助けられた事が多いと語る平田さん。石川県での起業に不安は感じていなかったそうです。
「むしろ東京で起業する方が不安でした。地方での起業は『お客様が来ないのではないか』と不安に思う方もいるみたいですが、東京の方が店が沢山あるので集客方法を考えなければなりません。七尾市は病院も多いしアクセスも良い場所ですから、集客の見込める場所だと直感しました。東京であれば開店資金がかなりかかります。それを何年もかけて返した後に貯金が貯まっている訳でもありませんし、数年後に地方へ移店を考えても好きに動けるかわかりません。それならば最初から地方での起業をと考えていました。大変だったのは人員確保ですね。少ないお客様でも回していける仕組みの店なのですが、人手不足はどうしようもありません。オープン当時は地元の女性を雇い2人体制だったのですが、その彼女が自分のお店のオープン資金が貯まった為2016年の12月に退職しました。年明けからはまだ東京にいた彼女に七尾に来てもらい、アルバイトも1名雇って営業しています。」
食材と人に恵まれた石川県
「年明けに来てもらった時には彼女だったのですが、2017年4月1日に結婚しました。奥さんは元々富山の出身だったので七尾市への移住も快く受け入れてくれました。もし移住先が和歌山だったら付き合っていなかったと言われたのには驚きましたね。今後は七尾市内か能登島で宿泊施設を併設した店を考えています。また、同年代の生産者の方々と一緒に能登の魚・肉・野菜を首都圏へ発信していくプロジェクトも進行中ですし、生産者と料理人を結ぶ事業も行なっていきます。これだけ食材に恵まれた場所は全国的に見ても珍しいですし、環境が整っています。東京から移住した個人的な感想ですが、能登は時間の流れがゆっくりで、人も温かみがあって穏やかです。」
地元の良さを一番知っているのは地元の方ですが、その良さに『気づく』のは県外の人なのかもしれません。