トップ 移住者インタビュー 町家をリノベーションした建築設計事務所と甘味処

2017.06.18
金沢市

町家をリノベーションした建築設計事務所と甘味処

  • #Iターン

紆余曲折を経て、たどり着いた金沢移住

金沢の人気観光地「ひがし茶屋街」から少し離れた閑静な住宅街にある、町家を改装した設計事務所兼カフェ「豆月」。一級建築士である北出健展(きたで たけのぶ)さんと、豆月の店主の美由紀(みゆき)さん。お二人とも関東の出身であり、もともとはご自身で設計した東京都内のマンションを自宅兼事務所として暮らしていました。

「いきなり金沢に移住を決めた訳ではないのです。2011年の東日本大震災の影響で仕事がストップしまして、さまざまな面で都内に住んでいることに不安を覚えた事がきっかけでした。東京の自宅兼事務所は拠点として残しつつ、馴染みのあった神奈川県の大磯へ引越しました。築80年の日本家屋でしたが、快適に暮らせましたね。妻の念願であった甘味処も朝市やイベントに出店し順調だったのですが、借家であった為そこに住み続けることはできなかったのです。日本の設えや季節感のある暮らしの心地よさを知り、古民家を中心に落ち着ける場所を探し始めましたが、なかなか理想通りの場所は見つかりませんでした。」

候補地がいくつか上がり、実際に現地に出向いたりと探していた健展さん。金沢までたどり着いたのはR不動産を見つけた事が大きかったそうです。
「当時仕事で付き合いのあったR不動産のホームページに掲載されていた金沢の町家を偶然見つけて、内見に訪れました。結果的にこの物件には決めなかったのですが、金沢は何度も訪れるほど好きな街の一つでした。もうすぐ北陸新幹線が通る頃でしたので、東京・大阪間と同じ移動時間であれば現在抱えている仕事にも支障をきたさないと考え、移住先を金沢中心で考え始めました。」

1年間の金沢体験からの決断

「私たちは実際の移住をする前に、金沢を体験できる多くの機会をいただきました。『金澤ふうライフ体験モニター』の第一回の参加者に選ばれ、運良く2日間の金沢暮らしを疑似体験。さらに、NPO法人金澤町家研究会が主催する『金澤町家巡遊』というイベント・セミナーにも参加し、町家でも融資を受けられることを教わったり、町家のワークショップにいくつも参加しました。
町家の数で言えば京都も多いのですが、実際体感する事でライフスタイルに合っているのは金沢だと実感しました。例えば移動手段ですが、朝は山手線なみにバスが来ます。私は車で移動できますが、主にバスと自転車を使う妻にはとても助かります。また、雪も心配の一つだったのですが、実際に雪すかしを行うとそれほど大変ではありませんでした。そして街のサイズ感も良かったですね。東京であれば仕事での移動に2時間かかる事もあるのですが金沢では目的地まですぐ着きます。」
金沢に通い、仮住まいを経験し、生活上の移動時間や季節感を凝縮して体験できた事が、移住の意思を固める結果になったようです。

文化の深みと質の高い生活

美由紀さんは金沢の文化に触れ、金沢の『当たり前』に多く驚かされたようです。
「まず、人と人との関係性が密ですよね。東京に住んでいた頃は周囲の方とあまり挨拶も無かったのですが、こちらでは挨拶しない方が不自然です。自然と親しくなるので情報も早く『この間取材が来てたね、新聞に載ってたね、テレビ観たよ』と嬉しい事にすぐ知っていただけます。また、食べ物では地元の物だからこその相性を感じました。冬にカニを食べた時に、石川県のお酢だとよりいっそう旨味が増すことに感動しました。それからスーパーより昔ながらの商店を積極的に使ってます。地元の方に食材や食べ方を聞くのが楽しみなんです。加賀棒茶はお茶屋さんごとにオリジナルの焙煎ですので、まるでコーヒーのように風味の違いを楽しめます。
関東では見かけなかった豆にも出会えたのも嬉しい点ですね。結婚当初から1階に自分のお店を持ち、2階は建築事務所という形に憧れていたので、石川の豆も使った甘味処をオープンでき、夢が叶いました。

また、私たちは昔からお茶を習っていたのですが、金沢では日常的にお茶会が行なわれています。東京だとちょっと構えてしまうようなお茶会を自宅でサラリと行ってしまうんです。工芸作家さんのレベルの高さも驚きでしたね。東京では行なわれていないような展示会もあり、文化の深みやクオリティの高いモノに日々ふれられるのは楽しみのひとつです。豆月の出張カフェやイベントへの出店のお声掛けもいただき、知ってもらえる機会が増えました。温かい人間関係が生まれる金沢に感謝です。」

健展さんも昔は新築をメインに設計されていましたが、自宅のリノベーションを知った方から声がかかり、現在ではリノベーションの仕事割合が増えているとのこと。時間をかけてじっくり選ばれた金沢。地域の人の温かさと質の高い暮らしを十二分に満喫されていると感じました。