石川から、みやげ菓子という“幸せ”を全国へ運ぶ「幸栄堂」
みやげ菓子で笑顔と真心をつなぐ
観光地へ行くと、日本人なら多くの人が買う「みやげ菓子」。そのみやげ菓子の多くが、実はこの石川県で作られています。石川は年間を通じて、気温差が少なく、お菓子の製造に適しているのだそう。
気候とともに、重要なのが、歴史。石川には温泉が多く、有名な加賀温泉郷があります。この加賀温泉郷のある、石川県加賀市に本社を置く菓子製造会社「幸栄堂」。この加賀温泉郷の歴史とともに、みやげ菓子の歴史が誕生しました。温泉へ行き、「旅行してきました」と会社の人や近所の人に手土産として配る“みやげ菓子”。より長い日持ちで、なおかつ安心でおいしいお菓子が作れないか、当時の社長含め、スタッフが知恵を絞り、生まれた商品こそ、笑顔と真心をつなぐ幸栄堂のみやげ菓子です。まだ生菓子の長期保存が確立されていなかった時代に、「お菓子を通じて笑顔を届けたい」という想いで生まれました。これは今も原点として、大切にされています。今では、北は北海道から南は沖縄まで、全国に広げ、シンガポール、韓国、台湾、中国など海外へも「みやげ菓子」で幸せを運んでいます。しかし、原点を大切にしながらも、時代とともに、会社も世の中の流れも変化していきました。
時代の変化とともに歩む
44期目を迎える幸栄堂とともに、30年を歩む、製造部工場統括課長(工場長)の中山柾和(まさかず)さん。中山さんは他の会社を経て、この会社の製造部へ入社し、様々な製造現場を経験して工場長へ。中山さんが入社した時は、6カテゴリーの商品だったのが、今ではケーキ・クッキー・おまんじゅうなど12カテゴリーまで増え、工場長となった今、工場も従業員数も当時より増えました。しかし、15年くらい前から徐々に不景気で観光業も衰退し、みやげ菓子の売上も減少。その後、中国人の爆買いなど、インバウンドの時代に突入しましたが、外国の方は観光地を訪れてもみやげ菓子を買うという文化がないため、大事にすべきは日本人の昔からの文化。そして“日本人の心を掴む”こと。「今の時代に求められているのは、多品種小ロット。多くの商品を選べるように、多くの声に応えられるように工夫しています。みやげ菓子は観光地以外でも笑顔を作る機会があると思うんです。」と中山さん。
今では営業の努力もあり、小松市の航空祭でブルーインパルスのクッキーを販売する機会を得たり、ある会社の新商品の記念サブレを作ったりと、みやげ菓子の可能性を広めています。「地域にもしっかり根ざした会社に。会社のある、生まれ育った“石川”を大事にしたい。」と中山さんは続けます。地産地消で、石川の五郎島金時を材料に商品化。今までは問屋からこんな商品を作ってほしいと依頼を受けて作っていましたが、自社がブランドを持ち、地域のための商品を作っていくことも大事にしています。地域環境を守ることにも積極的です。環境に配慮し、食品残渣の処理は水質処理基準以上を守り処理します。またCO2削減企業としても取材を受けるほどです。
時代とともに、地域、そして働く人をも想い、中山さんは従業員に寄り添います。「あんこ25kgと大変な作業もあるので、手順書や機械を加工して、働く環境が良くなった瞬間にこの仕事の醍醐味を感じます。今までしてきた仕事の全てが活かせている気がします。」と中山さん。人事開発・労務担当の都築恵さんも「待機児童もなく、短期時間勤務もでき、ママの職場復帰率100%です」と太鼓判。都築さん自身、人事部という多くの人との出会いがあるこの部署にやりがいを感じています。
人に想いを届ける会社
そして、自分たちの“仲間”への愛情は慰安旅行にも。幸栄堂には互助会がありますが、積立てのお金と会社からの多くの支援で、年に2回の旅行へ行くそうです。2年に1回は遠方へ。従業員が6~7館に別れて旅館を楽しみます。この旅行の想いは、観光地に元気になってほしいから。観光地があってこその会社。だから、観光地に想いを届け、みやげ菓子も見て、勉強も重ねています。
「みやげ菓子は、日本人らしい日本文化。今は外国技能実習生を約30名受け入れていますが、日本のお菓子の心を大事にする会社として、日本人の雇用もきちんと守りたい」というトップの意思を中山さんも感じています。
数年前には、商品が少しでも安くなるように、「購買課」を増やし強化。他の課も整備し、“人”に“想い”に寄り添うことに余念がありません。
このように、みやげ菓子を開いたときに「わー」と笑顔が広がる幸せは、たくさんの想いで作られています。従業員の皆さんは、自分たちが帰省するときに自社の商品を持って帰省します。それは、みんなが自社の商品に「安心」感を持っている証拠です。何百社とタックを組み、安心と笑顔を全国、そして海外へ。クッキーを1時間1万7千枚焼き上げる技術力と全国の地域性を知る情報力、どんな時も努力を重ね、“人”の笑顔に寄り添いたいという想いを大事に、今日を歩みます。石川のお菓子は全国に誇る日本文化だと肌で感じました。