トップ 移住者インタビュー 農業はやり方しだいで楽しいもの、この地に残す濱田流

2017.02.08
羽咋市

農業はやり方しだいで楽しいもの、この地に残す濱田流

人生の転機が訪れたとき

石川県羽咋市にある水稲とメロンや野菜を生産している農事組合法人アグリスターオナガさん。代表の濱田栄治さん(49歳)は、自分たちが食べるものをつくるときと同じ方法でつくることで、多くの方に安心して食べていただけるものを生産したいと考え、有機肥料による土づくりと極力農薬を使わない生産方法に取り組んでいます。濱田さんの家は昔からずっと小規模の兼業農家だったそうで、専業農家にしたのは栄治さんの代から。農業はもともとやりたくなかった濱田さんですが、現在は、農事組合法人アグリスターオナガの代表として試行錯誤をも楽しみながら農業に取り組む姿がここにあります。

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濱田さんは学校を卒業後、知り合いに紹介されて農業試験場(河北潟営農センター)で働きはじめます。しばらくしてから、仕事ぶりを見ていた農業試験場の人から、試験場で働くよりも、農業の現場で働く力があるから、当時東京にあった農業者大学校に行って勉強することを勧められたそうです。いつか親が倒れたら稼業である農業をする日が来るのだろうと漠然と思っていながら、本職で農業をすることを考えていなかった時期ですが、勧められるまま、まずは行ってみることにします。農業者大学校は濱田さんの人生の転機となり、濱田さんの背中をそっと押してくれた人々との出会いのときでした。

自己流ではじめた水稲だった

農業者大学校は農業を志す人が全国から集まってきている場所でした。「こいつら本気や!」真剣に農業を目指しているクラスメートから大きな刺激を受けたと当時を振り返ります。農業大学校では、主に農作物の栽培の仕方ではなく、自分が10年後20年後の将来に渡って、どのような経営をしていくのかといった、農業経営のやり方を学び、プレゼンの仕方など人と関わることなども勉強できる時間でした。ここでの学びの時間を過ごし、農業をやっていこうという気持ちが定まったそうです。

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卒業後、いざ農業を始めようと、実家に戻っても当時は両親だけで労働力はあまるぐらいの規模だったことから、新たに耕作できる土地はありませんでした。そこで、水稲ではなく施設園芸から始め、花やメロンを10年ほど生産する期間を過ごします。徐々に周りが高齢化していき、水田が余ってきた時期に、濱田さんも本格的に水稲をはじめることになります。水稲はすべて自己流で取り組んできた濱田さん。羽咋市のあたりは半湿田地帯で田植え機が沈没してしまうアクシデントが起こり、大変苦労したそうです。現在は品種を変えることで田植え時期を3分割して、早生品種・こしひかり・餅などの晩生の品種の栽培をひとりで行っています。田植えが楽にできる方法がないだろうか?濱田さんは平成15年頃から、機械メーカー数社の担当と話し合うようになっていきます。平成17年から水稲の疎植栽培を始め、今から4年前に、先輩農家さんや機械メーカーとの共同研究で実用化された、高密度育苗の田植え機の開発に関わることになったそうです。ひとりでやるためにうまれた知恵がひとつ形になったのです。

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この地で農業をつなぎ残したい

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共同研究で実用化の決まった高密度育苗の田植え機は、育苗のためのビニールハウスがいらなくなり、作業効率があがります。5月末に終えたい田植えが終わらない日々だったそうですが、昨年試したところ、作業が大きく短縮したそうです。田植えの期間が遅れると、生育期間が短くなり収穫量も減るといった悪循環につながってしまうため、決まった時期に作業できることがとても重要なのです。
濱田さんにとって稼業を効率化して残すことにはもうひとつ意味がありました。それは息子さんが小学生のときに農業をやりたいと言ってくれたから。子どもたちにやりやすい環境で残したいと考えています。その息子さんもこの春高校を卒業し、農業に関係する大学に進学することになり、一層楽しみが高まっています。濱田さんは仕事の傍ら、学校田の授業をするため小学校に出向いています。小学5年生を対象に田植えから稲刈り、そして収穫をいっしょに行います。後日、子どもたちが収穫したお米でカレーを作り呼んでくれるので、いっしょに食べながらクイズや質問に答える時間が楽しいと笑顔で話す濱田さん。子どもたちに農業のことを知ってもらい、大人になったら農業したいと思ってもらえたらと、毎年続けています。「大きくなったらアグリスターオナガで働いてね!」って声をかけたりしています。

濱田さんが考えている農業は、毎年同じやり方ではなく、遊び心を入れて行うこと。技術や品種も勉強して取り入れ、いろんなことにチャレンジしていこうとしています。現在試作中の商品もあり、とても楽しみです。地元を大切にして、そこでつくるものに愛情を込めている濱田さんご夫婦の想いが、息子さんにつながり、ずっとこの地で続いていく、そう感じました。

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