トップ 移住者インタビュー お客さまの人生の節目と地域を見守り見守られ390年「森八」

2016.01.15

お客さまの人生の節目と地域を見守り見守られ390年「森八」

石川県民がこよなく愛する「森八」の銘菓

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石川県民に「森八」と聞けば、知らない人はほとんどいない銘菓を揃える和菓子店。特に、60歳以上の方の信頼は絶大です。昔から、就職・結婚・出産・入学・定年・亡くなったときなど、人生の節目にふさわしいお菓子として、贈られる方が多いのです。

「祖母の代から使わせていただいているので、私も今回贈答品を購入しにきました。」という話もよく聞く話。信頼が信頼を呼び、何代にも渡って、贔屓にされている方が多いのです。愛される理由は1つ。最終製品のクオリティを守り続けていること。お客さまが信頼してくれている「老舗ののれん」を守り続けるために、安心・安全な商品を提供すること。そのためには、日々の仕事を丁寧に行いながら、お客さまの声をよく聞いて、製品にも反映して向上をはかるのです。

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森八のお菓子の要は、「餡」。石川には多くの製餡所がありますが、森八はお菓子の味を決める餡を自社で作っています。その数なんと30種類以上。製品によって合う餡が違うので、柔らかさや味などを1つ1つ調整するのです。味の決め手は、もちろん砂糖と小豆ですが、石川県を流れる手取川の伏流水も決め手の1つ。この伏流水はミネラル分が多いので、餡と反応して、黒色になります。森八の餡の特徴「黒さ」には、石川のおいしさがぎゅっと詰まっているのです。

地域への恩を絶対に忘れない

加賀藩御用御菓子司「森八」は、まさに加賀の前田藩とともに歩んできました。今、前田家は18代目。そして、森八も18代目。3代目の前田利常候に命じられて作った「長生殿(ちょうせいでん)」というお菓子が、前田家とのつながりのはじまりとされ、現在も販売をされています。このお菓子をはじめ、木型を使うお菓子は古くから多くの人や会社などに愛された経緯もあり、数多くの木型が大切に残されています。

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一般の方にも、この木型を見ていただけるように、「木型美術館」を本店の移動とともに開館しました。開館した理由は、今、菓子木型職人は日本にほとんど現存しないため、昔の美しい木型とその歴史を、そして森八の歴史を多くの方に知ってもらうためです。他にも、落雁手作り体験もしています。

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「森八は、歴史を作っていく会社だと思っています。」と株式会社森八の取締役兼採用担当の森岡晋也さんが話してくださいました。歴史を作るために、石川で1番古い和菓子店として、100年企業として、伝統を継承していくことに誇りと責任を持たれています。

また、伝統の継承は地域のためにという想いも持たれています。長い歴史の中で数々の困難を「地域の支え」で乗り越えられたと思っています。「小さくても永遠に続く企業」を目指して、地域も愛しながら守りながら、森八の伝統と歴史を守っていきたい…。そして、「今後も地域への御恩を忘れずに歩んでいきたい」と教えてくださいました。

働く人が働きやすい会社を目指す

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森八は、お客さまにも地域にも、そして従業員にも優しい会社なのだと感じます。働かれている方の最高齢は72歳。キャリアが50年ある人もいます。「気力と体力が続けばずっと働いてほしい」と森岡さんは言います。採用や教育には確かにコストがかかるので、企業としても長く働いてほしいという想いもあると思いますが、それよりもその人が仕事を好きなのであれば「気持ちを尊重したい」という想いを感じました。
今求めている人材は「向上心のある人」。これ以外は望んでいません。気持ちを強く持ち働いてくれる人を歓迎しています。部署は、工場と販売しかありません。それ以外の仕事はみんなで得意なことを分担して行っています。「中小企業で組織的にもフラットなので、顔の見える関係で困ったことや叶えたいことがあればすぐに行動に移せますし、できるだけやりたいこともその人の想いに合わせて叶えてあげたい」という想いもあるそうです。

そんな優しい想いが続き、江戸時代より、ここ石川で390年。お客さまを想い、時代とともに、伝統菓子を守り、菓子の種類も増やし、応えてきました。地域を想い、「地産地消」で材料の調達をしてきました。従業員を想い、女性が多い職場のため、女性が働きやすいように工夫し、障害者の方やもちろん全従業員が楽しく仕事ができるように協力して今日までやってきました。
「石川の魅力は住みやすいこと」と教えてくださった森岡さん。全ての人が心地よくくらしている裏には、石川県の企業の努力があるように感じました。お菓子から溢れる歴史と優しさを是非堪能していただきたい。森八が地域や関わる人々を包んできた「優しさ」で、“お菓子と歴史を作っていく会社”は着実に守られていくことでしょう。

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