トップ 移住者インタビュー 探し求めた表現に出会い、充足感に満ちた暮らし

2016.11.07
加賀市

探し求めた表現に出会い、充足感に満ちた暮らし

純粋な自然を和紙と写真で表現したい

加賀市で暮らすフォトグラファー&ペーパー・アーティストの堀江美佳さんは京都の大学でデザインと写真を学んだあと、イギリスのキングストン大学に留学し、帰国後は生まれ育った京都をベースに作家活動をしていました。数年前に山代温泉の旅館で個展を開催することになり、打合せなどで通ううちに、この土地に惹かれるようになりました。

堀江さんがペーパー・アーティストとして表現するのは、均一に漉き、きれいな和紙製品をつくることではなく、紙そのものの歴史が感じられるような和紙をつくることで、和紙の原材料が近くの山で採れるとことも、移住を決めた理由のひとつです。
加賀市内で住居兼アトリエのスペースを探していて、出会ったのが現在の住まいでした。ここは20年近く空き家だったため、床や水回りには手を入れましたが、壁や天井はそのまま残し、1階をアトリエ、2階を住まいとして使っています。

移住前に望んだとおり、こちらに来てからは、和紙の原料の「ガンピ」も山に自ら採取に行き、皮を剥いて生成するところから、漉いて和紙にするまで、すべて自分で行います。和紙ができたら、それで完成ではなく、和紙に、写真をプリントすることで、はじめて作品になります。この手法にたどりつくまでは試行錯誤もありましたが、すべてが自然から成る表現に、探し求めてきたものに出会った満足感があると堀江さんはいいます。

堀江さんが暮らしているのは加賀市では一番小さい集落。建物を見に来たときにも、珍しさからか近隣の方が様子を見に来て、いろいろと質問されたそうです。そのときにとても親しく話をしてくれたこともあり、移住に対する不安はありませんでした。移住後も、住人が増えたことを喜んでくださっているようで、野菜のおすそ分けいただいたり、この地方の食べ物について教わったり、皆さんとても親切にいろいろと教えてくださいます。

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和紙の原材料であるガンピ

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写真をプリントし、天日干しした和紙作品

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アトリエに残るいろり

英会話教室でコミュニケーションの輪を広げる

現在、堀江さんは作家活動の傍ら、何人かの生徒さんに英会話のプライベートレッスンをしています。工芸を中心に、加賀には世界に誇るすばらしい技術があるのに、その作り手が自分の作品を自分の言葉で伝えられないことにもどかしさをかんじていたこともあり、お手伝いができればと始めたそうです。

最近は自営業の方、お子さん、主婦の方など、さまざまな立場、職業の方が通ってくださるようになり、英語を介して地域の方と知り合えるよい機会となっています。会社勤めのように休日が決まっているわけではありませんが、珈琲とパンがすごく好きなので、時間があればお気に入りのカフェやベーカリーに立ち寄って本を読んだりして過ごします。

建築にも興味があり、金沢にある鈴木大拙館のたたずまいが好きで、「それこそ開館から閉館まで過ごしたいくらいに惹かれます。衣食住のなかでも「住」に重きを置くのも、建物が好きだからかもしれませんね。」と堀江さんはいいます。

仕事上は、電話やメールでのやりとりがほとんどですし、個展やその打合せで遠方に出かける必要があっても、小松空港や電車の駅、高速道路のインターも近いので不便を感じることはありません。
歴史や文化の面でも生まれ育った京都とつながりが深く、自分が表現したい作品づくりを実現してくれるここでの暮らしは、とても心豊かな時間を与えてくれると教えてくれました。

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住まい横を流れる川の水も和紙づくりには欠かせない

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山に原料をとりにいくため、車もアウトドア仕様

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加賀四湯/加賀には片山津、粟津、山代、山中という4つの温泉郷があり、加賀四湯と言われる。写真は明治時代の総湯を再現した山代温泉「古総湯」

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鈴木大拙館/金沢市出身の仏教学者・鈴木大拙にちなんだ施設。金沢市中心部にあり、建築家・谷口吉生による建物は建築ファンの間でも有名