広めたい!希少でおいしい奥能登米
就農を決意させたものは?
山と海の恵み豊かな奥能登、山あいの町。輪島市町野町で、水稲を中心にリンゴやクリを栽培する有限会社川原農産の川原伸章さん。3歳から9歳までの4人の子どもの寝かしつけも担当する、子煩悩なお父さんです。伸章さんは、大学卒業後食品メーカーへの就職を希望していましたが、若い伸章さんのUターンを待ち望む地元の人たちの思いに応えたくて、就農を決意しました。
川原農産では、果樹栽培が主だった先代の頃から、機械を持たない地主さんたちに田植えや稲刈りなどの作業を委託されていました。徐々に稲作全体を委託されることが増え、水稲耕作面積は伸章さんが就農してから14倍にも増え、今では水稲栽培が主力となっています。「大切な田んぼを託してくれた地主さんの思いをくんで、お米を育てていきたい」と、話す伸章さん。
おいしい奥能登米――多くの人に知ってもらうために
能登半島は、寒暖流の合流・変化に富む気候・朝晩の寒暖差・天然ミネラルを含む豊かな土壌・きれいな雪解け水…と、おいしい米ができる条件がそろっています。中でも奥能登は、“良食味米”が育つ地域と言われますが、なかなかそのおいしさが県外には伝わっていません。そのため、田んぼ1枚当たりの面積が狭い奥能登では利益確保が難しく、耕作を諦めてしまう農家もあります。
奥能登米の味の良さをもっと知って欲しい!
伸章さんは、農家の既成概念にとらわれず新しいやり方を模索し、ネットや出張販売を行い、毎月1回は東京丸ビル近くの青空市場にも出店しています。東京のビジネス街では、1キログラムの米でさえも「重いから…」と言って手に取ってもらえません。そこで、山盛り1合を100円で量り売りをしたところ、買ってもらえるようになりました。今では、お客さんの中には、2キログラム入りなどを購入する人や、リピート購入する人もいます。奥能登の恵まれた自然で育まれた米の味は、都会の人の心をしっかりと捉え、販路の可能性はアイデア一つで広がるのですね。
作物は“いのち”――大切にしたい向き合い方
伸章さんの栽培方法は、できるだけ自然の力を借りながらも農薬や化学肥料も使っています。「特別なことはやっていない」と伸章さんは言いますが、作物に対してとても強い思いを持っています。
――作物は“いのち”
――作物を育てることは、“いのちを育む”こと
「愚痴をこぼしながら育てられては、耳をふさぐことも動くこともできない作物にとって、良い状態ではありません。作物が気持ちよく育つ環境を整えられるよう、作物の声に耳を傾け栽培しています」、伸章さんは4人の子育てと重ね合わせるかのように話してくれました。この伸章さんの姿勢が結果として消費者に喜んでもらえる。作物への向き合い方の大切さを、教えられた気がします。奥能登米のおいしさの根底には、生産者の熱い思いが流れているのですね。