トップ 移住者インタビュー 目の前にある環境を味方につけて、6次産業化にチャレンジ!

2016.03.21
白山市

目の前にある環境を味方につけて、6次産業化にチャレンジ!

  • #6次産業化

田舎でエステサロン経営

石川県金沢市の中心部から車で20分ほど走ると、石川県で一番広い市・白山市に入ります。広大な耕地、手取川からの豊富な伏流水を生かした、県内有数の米どころです。畑が広がる一本道をまっすぐ走っていると、突然右手にオシャレな外観の建物が現れます。「ここに間違いない」と訪ねた先がエステサロン「Serendipity」。黒を基調としたエステサロンらしい雰囲気に、黄色いビールケースにネギがごっそり入って玄関先に置かれているところがなんとも不釣り合いで、しかしそれがまたこの土地らしさを感じさせます。

西蔵の蔵

サロンを経営する西藏利枝さんは13年前に小松市にエステサロンを開業。3年前にここ白山に2店舗目をオープンしました。空港もあり都会的なイメージがある小松市でのエステサロンは納得ですが、なぜ2店舗目が白山市なのだろう? と疑問に思ってたずねたところ「白山市に嫁いだから」とのこと。嫁ぎ先は代々米作りを主とする家族経営の専業農家です。「以前は小松を出るなんて思ってもいなかった」と茶目っ気たっぷりに話す利枝さんは、明るくてチャーミングな女性です。

起業〜ご主人との出会い

利枝さんのご実家は、小松市で銭湯を経営しながらの兼業農家でした。そんな環境で育った利枝さんは、幼い頃は「銭湯でマッサージをする人になる」と思っていたこともあったのだとか。エステの道に進んだのは、そんな育った環境が影響しているのかもしれません。13年前、何かを自分でやろう! と起業した際、色々な職種を考えたそうですが、やはり最終的にはエステサロンを選びました。反対する周囲の人たちの心配をよそに「何とかなる」と自信満々に起業したのだとか。「エステサロンは予約して来るから心配はない」と言われると「そういうものか」と納得させられてしまうような雰囲気が利枝さんにはあります。

西蔵さん

利枝さんのお店はエステサロングループの加盟店で料金が手頃。通いやすくお客様にも敷居が低いのが特徴です。また、自分のもとで働いていたエステティシャンが独立するサポートもしています。これまでに利枝さんの元から独立した人が開いたお店は6店舗もあります。「女性がいろんな働き方ができるような社会になってほしい」と利枝さんは考えています。月5万円くらいお小遣いを稼ぎたいという人もいれば、フルタイムで働きたいという人、働きたいけれど、子どもとの時間も大事にしたいという人など個々が働き方を自分で選べれば、きっと、もっと女性の活躍の場が増えるはずです。

エステ

そんな姉御肌で頼れるキャリアウーマン利枝さん。もともとは結婚するつもりなんてありませんでした。それどころか、ラスベガスに渡って新たに貿易の仕事をしようかな、とまで考えていたこともあったのだそうです。でもそんな矢先、県が主催する婚活パーティーに参加し、専業農家のご主人・廣茂さんと出会ったのです。利枝さんの参加の目的は、お相手探しではなく「結婚したい女性=エステのお客様になるかも!」というお客さん探し。一方の廣茂さんも婚活パーティーには来ていたもののとりあえず利枝さんと話をして「カップル成立」の後、「大事な寄合があるから」と早々に会場を後にしていましたから、利枝さんは「もう会わないんじゃないか」と思っていたそうです。これは本当に奇跡、運命だったのかもしれません。お互いガツガツしていなかったのが良かったのかも…と利枝さんは笑います。

農業とのエステの繋がり

利枝さんの結婚の条件の一つが「農業を手伝わないこと」。兼業農家に育ち、農業の大変さを知っているからこそです。廣茂さんに農家を辞めたら? と言ったこともありました。しかし、石川県で開催された、発酵食を学ぶ「発酵食大学」をきっかけに、エステと農業の繋がりに気がついたのです。エステで外側から、農業=食で、身体の中からも美しく。「農家であることがすごく強みだと思いました。」こうなったら立ち止まらない利枝さん。そうこうするうち廣茂さんの作るお米を使い、食べることで美しくなることを目指す6次化商品「玄米粉」の開発に辿り着きました。

農家の嫁としての働き方

「米粉」はその名の通り米を製粉したものです。同様に玄米を製粉した「玄米粉」はまだなかなかありません。玄米はお米以上に粉状化が難しいのですが、この玄米粉はまるで片栗粉のようにキュッキュッと音がするほど細やかなので、そのまま料理に使うことができます。県の6次化商品開発事業「石川あぐりケーション」にも参加しており、マーケティングやパッケージデザインなど、学びが生きた商品に仕上がりました。6次化商品はこだわりの結果、値段が高いものになってしまっているケースが多いのですが、玄米粉は値段もサイズも手頃で、日常使いができます。利枝さんは「日常使いをして欲しい。これをきっかけに、お米に興味を持ってもらえたら」と期待を込めます。今後は玄米粉を使ったお菓子の商品化も考えています。

お米農家

米の消費が年々減り、経営は厳しくなる中、それでも米農家を辞めない廣茂さんには、代々伝わる家と蔵を守るというプライドがあります。廣茂さんの家は数えられるだけでも12代、実際はもっと長い歴史のある家系です。有機肥料100%、手間ひまをかけた特別栽培米を、明治元年に建てられた蔵で保管・熟成させているのが特徴です。廣茂さんのお米は地元の有機米の中でも、飛び抜けて美味しいと評判。県から表彰も受けています。利枝さんも「よそとは想いが違うから、味もまったく違う」と言います。有機肥料は効果の持続期間が短いため、効果が切れないように何度もまかなければなりません。それだけでも作業が何倍にも増えます。また、最近は大型冷蔵倉庫での米の保管も増えてきていますが、昔ながらの蔵の方が、温度も湿度も一定に保てるそうです。代々守ってきた蔵とお米。廣茂さんは自分のお米を「西の藏米」と名付けました。エステと農業が繋がり、ますます夢は膨らみます。

「女性の自信づくり」をしたい

西藏さんがエステ、玄米粉の商品開発に取り組む目的は「女性の自信づくり」です。身体の中からも外からも美しくなれば、キラキラ輝き、自信に満ちてきます。そんな女性は「人にやさしくなれる」と利枝さんは言います。家庭でも職場でも、周りの人もきっと幸せになれるはず…と。

そして「小松が大好きだったけれど、白山もいざ来てみたら楽しい」と、利枝さんは白山市でのくらしを楽しんでいます。まさに、住めば都。「こんな時代だからこそ、寄合のようなリアルな人と人が大事」と、ご近所付き合いも大切にしています。もともと兼業農家育ちだったことも馴染みやすかった理由の一つでしょう。そしてなにより、芯の強さとしなやかさ。「子どもの頃から食べものからパワーを貰ってきた」と言う利枝さん。振り返れば、今も昔も、農業と関わるくらしをしてきました。

インタビューを終えたところに、ちょうど廣茂さんが畑から戻ってきました。利枝さんとは正反対でゆったりした空気が漂う廣茂さんは、照れながらも撮影に応じてくれました。二人のやりとりはお互いをとても大切にしている様子が伝わってきて、こちらが照れてしまうほどの仲良しカップルでした。エネルギーと自信に満ち溢れる利枝さんは、最高にまぶしい女性です。

白山市でエステを起業