「企業らしさ」「その人らしさ」採用は“らしさ”との合致
- #石川県
「働く」ことを仕事にする
石川県には、最強の「働く」応援団長がいます。千葉商科大学の国際教養学部専任講師であり「働き方評論家」として活躍する、常見陽平さん。大手企業からベンチャー、フリーランスを経て、現在は労働社会学を専攻し研究を重ねています。数多くの書籍も執筆。まさに、「働く」を仕事にするプロフェショナルです。
常見さんは、石川県の「いしかわUIターン応援団長」を務めて5年目。採用セミナーや都市部の若者と交流する「いしかわナイト」など、長きにわたり応援を続けています。
石川を応援するきっかけは、県庁職員との出会いから。石川が地方で「採用」に力を入れるためにはと、模索していた中で出会ったといいます。
そもそも常見さんが「働く」ことを仕事にしたのは、自身が働くことに魅力を感じているから。「元々、労働問題に関心があり、大学時代に労働社会学を学び、人材ビジネスや、人事部での仕事も経験し、様々な立場で“働く人”を見てきた。労働は、労働者にとって『過酷』なものになりえるし『搾取』される可能性もあるが、一方で『人を豊かにする』要素もある。」といいます。
地方移住でも争点となることの多い「仕事」。移住と仕事のマッチングを図っていくためには、どう仕事を魅力的にアピールしていくのかという“魅せ方のテクニック”を、採用セミナーに参加した企業などに伝えています。
石川の魅力と、「人」を結ぶために
いしかわUIターン応援団長であり、採用セミナーの講師をしている常見さんに県内企業や石川県の印象を聞いてみました。
石川県の企業を回った印象としては、
「優れた会社、ユニークな会社がたくさんある。隠れたニッチトップ企業というのが多い。」ということ。「感銘を受けた会社は “理念”を大事にしている」と強く感じたそうです。
「採用マネジメントで大事にしているのは、企業の魅力抽出。面接のメソッドではなく魅力の抽出こそが大事なのです。」と常見さんはいいます。「例えば、ダイバーシティに力を入れている会社には、経済産業省が行うダイバーシティ経営企業100選に応募することを提案しました。その結果、この企業は遠方からも視察が訪れる企業にまで成長しています。」
こうした魅力ある企業が、県内にはまだまだ隠れていることに気づいてほしいと常見さんは思っています。
そして石川県のことを
「伝統と新しさが同居していて、センスもよくて良い。古い建物が残っているのに、駅前のオブジェがなじんでいたりする。」「地元が好きで地元に誇りを持っている人が多い。地元のために行動を起こそうと思っている人が多い。」と感じてくださっています。実は常見さんも下町らしさとスカイツリーなど新しさが同居する東京都墨田区にお住まいになられており、金沢と感覚が近い環境での暮らしを楽しんでいます。
石川県民から沢山の地元愛の強さを聞くと、「石川の未来は明るい!?」と思う方もいるのでは?でも実は、石川県は面積が広く、人口減少など課題が多い“課題先進県”という話もあります。
「課題があるなら、現状とともに、なぜという原因をしっかり考え、現実を受け止める必要がある」と常見さん。「地方に人がいない」という問題。もっと多くの背景を受け止めて、自分の住みたい土地にどんな産業や会社があって、そこで自分の能力や経験が生かせるかどうかを考える必要があるのかもしれません。
「いしかわ採強道場」で企業らしさを追求
2018年に4年目を迎えたのが、石川県主催で行われている最強の採用セミナー「いしかわ採強道場」。常見さんはこのセミナーの講師でもあります。
「労働者の変化を感じることが大事」、どうしてそういう若者ができてしまったのかを理解するために現状を掘り下げます。
「最近の若者は…という人事・経営者の気持ちもわかるが、そこを理解しなくては、採用は難しい。」と話してくれました。
セミナーの最後に、企業の魅力を引き出すために、受講者が自社の社長インタビューを行い、発表する形式の講義を行います。そして、その結果を企業に戻します。
「『人事は経営課題』だと気づいてもらうことが大切」と常見さん。
採用担当者が、経営者の言葉から魅力抽出を重ねることで効果が上がり、「地味な会社でも応募数が増えた」とともに、「バッティング先が変わった」など新しい課題も出てきています。この新しい課題が出てきたのも、採用活動のスタートラインに立ったからこそだと感じます。
地方は、「移住者やUターンを増やす」など人口を増やすために、アピールをたくさんしています。しかしながら「仕事」の見える化ができていないと生活拠点を置けない現状もあります。暮らしとともに、どんな企業があるのか?石川の企業は今、「企業らしさ」に「その人らしさ」をマッチングしようと日々努力を重ねています。