トップ 移住者インタビュー 先駆的な地域密着型・農業経営モデルを確立!地域活性化に尽力する有限会社すえひろ

2016.04.20
珠洲市

先駆的な地域密着型・農業経営モデルを確立!地域活性化に尽力する有限会社すえひろ

石川県初の“農業法人”の誕生

世界農業遺産に認定された石川県能登半島先端の珠洲市で、米や小豆などを生産する有限会社「すえひろ」は、“石川県初”の農業法人です。
設立は今から21年前になります。当時、珠洲市では農業就労者の高齢化が進み、後継者不足に直面していました。地域農業の生産性向上には、農業を“家業”ではなく“企業”にすることが不可欠でした。

そこで、JA全農に入社して11年目の若手社員だった末政博司さんに、周囲の農家から「農業を活性化して次世代に引き継いでほしい」と切実な願いが託されました。
兼業農家の家庭で育ち農業学校を卒業していた末政さんは、周囲の期待や地域農業の向上に使命を感じました。JA全農(全国農業協同組合連合会)を退社後、知り合った人からの助言も得て1995年2月に有限会社「すえひろ」を設立しました。農業法人としては石川県で初、全国では8番目の誕生です。
その後「すえひろ」は次世代の農業の担い手として地域から認められ、多くの農地を借り受けて農産物を生産するようになりました。現在では約100ヘクタール(およそ東京ドーム21個分)まで受託面積の集積が進み、米・小豆・大豆を生産しています。

先駆的な農業経営と農業体験への取り組み

末政さんは能登の土地の恵みを生かしながらも、いち早く最新農業機器を導入し労働総時間短縮や低コストに努め、より高度な栽培技術の習得にも力を注いできました。
そのかいあって設立から10年後に、有機肥料で育てた独自ブランド米「すえひろ舞」が、「おいしくて安全・安心な米」と高く評価され、農林水産省農産部門で天皇杯を受賞しました。また「能登大納言小豆」は、粒の大きさと鮮やかな赤い色が“能登の宝石”と評され、ブランド化にも成功しています。

「すえひろ」では農作物を作るだけでなく、農業に興味のある人が就労体験できる農業インターンシップも毎年受け入れています。農業未経験者が滞在しながら実際に農業作業にあたることで定住のきっかけとなり、珠洲市に移住し農業に携わる人も出ています。他にも、田植えや稲刈りをあえて手作業で体験するグリーンツーリズムに取り組むなど、県内外の人との交流拡大にも貢献しています。

珠洲の風土と人々に支えられて

珠州市のある奥能登地域独特の気候風土は、農業をする上で大きな強みでもあります。
ミネラル豊富な土と自然の水は食味を追求した米作りができます。「能登大納言小豆」が栽培される7月から10月は「あえの風」と呼ばれる東風が吹き、病害虫の発生を招く露を払ってくれます。
そして、珠洲市には優しい人たちが居ます。地域の農業の活性化に尽力する末政さんを、心からから応援し困ったことがあれば協力し助けてくれました。「農家の高齢化問題と向き合いながら、おいしい米や小豆作りができたのも、優しい人に恵まれ意見をいただけたから」と末政さんは振り返ります。

人々や気候風土に感謝しながら、先駆的な農業経営に取り組む――こういった姿勢が地域に受け入れられ、活性化に貢献できるのだなと感じました。