ILAC

「人づくり」から「未来に続くまちづくり」を

能登にいる「人」に魅力を感じてほしい。



石川県能登町は平成17年3月1日に旧能都町、旧内浦町、旧柳田村が新設合併し誕生。能登町長の持木一茂さんは合併前後合わせて今年で任期が19年目と長期間に渡り、まちづくりをリードされてきました。持木町長さんは43歳のとき、歯科医をやめて町長選に立候補。異業種とは知りながらも、困っている地元のために勢いで飛び込んだ町長の仕事。行政用語もわからない中で懸命に取り組み、市町村合併を経験、紆余曲折を経て「人がいなくなれば何もできない、いかに能登の人口を増やしていくか、あらゆる手をつくしてできることは何でもやりたい。」という強い信念のもと町長として取り組んでいます。





能登は、のと里山空港が出来たことで、東京で朝ごはんを食べてきても、お昼ごはんは能登で食べられるくらいのアクセスの良さがあります。「能登は食べるものがとにかくおいしい。魚の新鮮さは、どこにも負けないぐらいです。春からはイカ、9月から漁が解禁になる紅ズワイ、冬はとにかく寒ブリが最高です。」とおすすめの能登の幸を教えていただきました。新鮮で美味しいものがたくさんある能登町ですが、持木町長さんは「能登のように景色がいい、食べ物がおいしいところは日本全国にたくさんあります。だからこそ、能登にいる人の魅力を感じてもらいたい。面倒見がよくて、穏やかな"能登人気質(のとじんきしつ)"を知ってもらい、居心地の良さを感じてもらいたい。」と思っています。

"祭り"や"ヨバレ"を通した交流を大切に。



以前、地元の中学生に向け能登に関するアンケートをしたところ、進学などで町外へ出ても、6割の人が能登にまた帰ってきたいという回答でした。今後は8割くらいの人に、再び能登へ帰ってきたいと答えてもらえるような結果につながるようにしたいと持木町長さんは考えています。中でも、地元に戻ってくる人の多いのは祭りの時期。国の無形民俗文化財にも指定されているキリコ祭りの中でも'あばれ祭'の人気は高く、この祭りが好きで毎年帰ってきている若い人や、能登に移住してきた人もいます。地元の人にとって、地域の祭りはご近所付き合いを深めることができる大切な場なのです。






能登に引っ越して来た方には、ぜひ町内会に入っていただいて、能登半島各地で行われている"キリコ祭り"の計画や準備から参加してもらいながら、地元の人との交流を大切にしてほしいと持木町長さんは考えています。いろいろなことがわからなかったり不安な人には、移住してきた後も相談できる「能登町定住促進協議会」というサポート団体もあり、安心して能登に来てもらえる体制が整っています。
また"ヨバレ"という、能登の独特のもてなし文化があります。お酒や食事を囲み親睦を深める場として大切にされています。お祭りの夜には、多くの家で"ヨバレ"が開催されます。
こうした地域内での交流から生まれた団体が自発的に地域を盛り上げようと活動する事例もあります。最近では、盆踊りがなくなってしまった地域で、寄付を募って地域の盆踊りを復活させたり、たこ焼きの具のタコを、地域の特産品のイカの口(メガラス)にかえて焼いた「めが焼き」というB級グルメを考えたりと、活きのいい若い人がたくさん活躍しています。

自分のまちを愛する気持ちがなにより大切。





持木町長さんは、政治の仕事をやるのではなく、自分は"まちづくりの仕事"をしている気持ちで働いていると教えてくれました。「町長としての仕事は、批判などもありますが、やりがいがあり楽しい仕事です。外からみていたときは、役場の仕事は楽なのではと誤解もありました。実際に町長になってみて、職員のひとりひとりが、"町民のために何ができるか"を第一に本当によく頑張っている。」と感じたそうです。

能登は他の地域に比べても人口減少が何よりも問題です。以前は町内に3校あった高校が現在は1校となってしまいました。唯一残った能登高校の存続のために、高校内に希望すればだれでも無償で通える公営塾をつくりました。まずは学力向上を図り、進学校になることで在校生を増やそうという取り組みです。この活動を継続して行く中で、進学の選択肢の幅が変化してきました。当初は能登高校の生徒の進学サポートとして運営していた塾ですが、在校生だけではなく、これからの進学希望者となる中学生や小学生に向けてもサポートできるように、公民館を改築して「まちなか鳳雛塾」として活動の幅を広げました。



自治体が取り組まないといけない、防災、教育、福祉の3つの柱があります。防災面では、町内会単位の自主防災組織を強化する上で防災士の有資格者を増やし、自らの命は自らで守るという意識づけを推進しています。さらに福祉面でも、地元の総合病院の看護師不足を解消するために奨学金制度や寮をつくって地元の医療の存続に注力しています。「自分のいるまちが好きという原動力で、若い人にはこれからの能登のまちづくりを活気づけてほしい」と持木町長さんは思っています。



持木町長さんと話しているときに、若い職員の方との間でアットホームな会話が飛び交う、風通しの良い雰囲気が印象に残りました。見渡すかぎりに広がる穏やかな海のように、おおらかな気持ちでまちの存続を願いながらも、どんなことでもチャレンジしようという熱い想いをもっている持木町長さんの気持ちが、若い職員の方にもしっかりと伝わっていると感じる瞬間でした。これからの能登の「未来に続くまちづくり」はそんな何気ない会話から始まっています。

この記事が気に入ったらいいね!
送信する