ILAC

人材はシェアする時代へ、七尾で見つけた新しい移住のかたち/前編

七尾で見つける「自分らしい生き方」


「自分らしく生きていくこと…自分の価値をどの社会で見つけるかだと思う」
こう語るのは、株式会社御祓川(みそぎがわ)代表取締役社長の森山奈美さん。石川県七尾市生まれ。大学では都市計画を専攻し、他の会社を経て、都市計画コンサルタントとして会社設立に携わり、現在、まちづくりのつなぎ役として、能登の元気を発信しています

森山奈美さん

能登半島の真ん中に位置する七尾市には、市を東西に分ける御祓川が流れています。この川の清流と周辺のにぎわいの「再生」や、七尾文化の担い手の育成、商業の発展を目的として、民間出資のみで設立されたのが「株式会社御祓川」。まちづくり会社として、今年で17年目を迎えます。「みせ育て・まち育て・ひと育て」を行う事業により、現在、大学生・社会人の若者が全国から集まり、インターン生や研修生として活躍しています。“ひと”と“まち”づくりの取り組みについて、森山さんと、「御祓川」ひと育て課コーディネーターの岡本竜太さんに、話を聞きました。

まちづくり会社の取り組み



岡本さん

岡本さんは、岐阜出身。学生時代は、地域で創意工夫している人々と、アイディアを出し合いながら地域の可能性に向けて、挑戦するプログラムに参加していました。新卒でUターン、その後、地元とは違う地域へ飛び込みたいと思い、七尾市に移住してきました。働きはじめて3年、主に大学生のインターンシップや社会人の研修プログラム、移住したい人を対象にした研修ツアーの担当をしています。「まちづくりに欠かせないことは、何より“ひと”。その人を育てる中に“まち育て”と“みせ育て”がある」と岡本さんは言います。

その取り組みは、“まち育て”では、「御祓川大学」という市民大学をつくり、全国から集まる学生や社会人がさまざまなプロジェクトに携わり、学びながら成果をあげていくことをしています。例えば、金沢の大学生がプロ建築家の指導を受けながら、リノベーションに携わったり、地域の方が、自分の得意なことを活かして街を活気づけたいなどの要望を、「プランニングの講座」にしたりしています。また、活動を進める上で必要になるファシリテーションなども、講座のカリキュラムに入れています。

01

“みせ育て”では、店舗のECサイトの構築やコンサルティング、商品開発のお手伝いをします。また自社で運営している「能登スタイルストア」で、名産品を販売したり、オリジナルブランドの企画・販売も行ったりしています。
最近は、「能登の赤なまこせっけん」をつくり、ナマコの廃棄部分の商品化にチャレンジしました。赤ナマコは、ナマコの中でも築地市場では高値で取引されるものですが、食用にならない端の部分を何とか無駄にせずに利用できないか、と開発したそうです。

「能登留学」から始まる移住


2010年から長期実践型インターン事業がスタートして、13期目。これまで約100名がこのプログラムに参加しています。インターンシップをする大学生の80%は石川県外(関東・関西含む)からの大学生。6ヶ月間滞在する学生が40~45%あり、場合によっては休学して参加する学生もいます。また、滞在中は、インターンハウスと呼ばれる森山さんのお宅で生活を共にしています。…まさに“能登留学”!

インターンシップの受け入れ先は、3つのスタイルに分かれています。
・「地域企業型」は、地元企業が受け入れ先となり、伝統産業の店や和倉温泉など、この地に根ざした企業のプロジェクトに参画します。
・「集落型」は、七尾市の隣町や奥能登の何十軒しかない集落で、地域おこし協力隊や農家民宿が受け入れ先となり、地域活性化プロジェクトを仕掛けます。
・「まちづくり型」は、株式会社御祓川が自ら受け入れ先となり、まちづくりのノウハウを学びます。

この6年間で、インターンシップに来た学生のうち、石川県に就職したのは12人(能登7人)。中には、ここで経験したことがきっかけとなり、教員採用試験を受けて能美市で教員になった人もいます。インターン中にチャレンジした経験と、築かれた人間関係、暮らしやすさを体感したことなどが、学生たちをひきつけているのかもしれません。

11

“ポスト資本主義”の学生に向けて


今後は、インターン生から、企業をイノベーションできるような学生も育てていきたいと、森山さんは考えています。「最近の学生は、お金だけではなく、むしろ社会の役に立ちたいと考える傾向にあります。そういった学生たちに向けて、地方の会社に就職する価値観や、“ポスト資本主義”の未来を一緒につくっていく仲間が増える喜びを伝えるために、東京や京都で“ローカルインターンシップスクール”(LIS)という講座を開いています。LISは、全3回出張講座になります。能登の紹介から始まり、具体的にプロジェクトの説明をし、自分の興味あるものにどう貢献できるかを考えます。最終回には、能登へインターンシップに来ることを想定して、事前の準備や課題にチャレンジしてもらう講座内容となっています。月に1回、3ケ月間かけてじっくり行い、個別にスカイプミーティングを重ね、想いを共有しているのも魅力です。

この記事が気に入ったらいいね!
送信する